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ステージで演奏するピアニスト

発表会やコンサートに出掛けると「この人上手!」と思わせる演奏に出会う事があります。
上手な演奏を聴き、上手な演奏のポイントを知ることは、ピアノ上達の近道です。

ここで…
・「上手!」に聴こえる人の具体的な演奏の特徴は?
・「これが上手な演奏だ!」と判断するポイントは?
・「上手な演奏」になるための練習方法は?

以上を詳しく解説します。

いわゆる「上手」を知ることで、「あの人上手」と言われる演奏を目指しましょう。

音と音が程よく繋がれた…なめらかな演奏

上手なピアノだな…と感じる人の一番の特徴は「なめらかな演奏」です。
練習始めたてのつっかえつっかえの段階を越えると、曲の冒頭から終まで通して弾けるように仕上がります。ただ通して弾き切るだけではなく、その先の「なめらかな演奏」へとステップアップ出来るようレクチャーします。「なめらかな演奏」への練習は地味で時間と根気を要しますが、確実に演奏が良い方向へと変わります。自由気ままに弾けるところだけ弾いていたのでは、上達は見込めません。苦手な箇所をピックアップし、効果的な反復練習を心掛けましょう。

なめらかなピアノ演奏への方法

まずなめらかに弾けるようになりたい箇所をピックアップします。その際、自身の演奏がどのくらいなめらかに弾けているかを判断するために一度録音をして聴いてみましょう。

ピックアップした箇所を片手ずつ見ていきます。
なめらかに弾くポイントはメロディの流れを止めないことです。
音が大きく上下する箇所は、指の動きが複雑になり流れが滞る傾向があります。
ゆっくり片手ずつ弾いている手を眺めながら、手が無駄な動きをしていないか確認してください。

無駄な動きが改善されたら、次のステップへ行きます。

ピックアップした箇所の楽譜をよく眺めてください。
どのような音形をしていますか?
・山のように盛り上がっている
・凹んだ形をしている
・一本の糸のように平坦な形
・音が跳躍しすぎて、ジグザクの形

ご自身で特徴を掴んでください。


山形や凹み音形の場合、音が一番高い箇所に向けて体の力と気持ちを込めていきます。
具体的に言うと、一番高い音に向かって音量を上げていきます(クレッシェンド)。
逆に一番低い音に向かって、音量を抑えていきます(ディミヌエンド)。
指が慣れたら、目線を手元から離して下さい。手元や鍵盤を見ずに弾くことで視覚からの情報が減少しより聴覚が冴えます。
自分の弾いている音が耳に入ることで、より改善点が明確になりなめらかな演奏へとステップアップしていきます。


一本の糸のように平坦な場合、糸の太さが変わらないように力の加減を意識して下さい。
人の指は一本一本長さ太さが違います。
何も意識せずに弾くと当然音は繋がりません。
具体的な練習法はピックアップした箇所だけ録音します。

録音→聴く→弾くを片手ずつ繰り返して下さい。

一度録音して聴いただけでは、改善点が見つけられません。
また自身の演奏の良い点も見つけられません。良い点とは上達した点です。
良い点に気づかないと、モチベーションが下がり練習への意欲が低下します。
改善点、上達した点の両方を探して下さい。



ジグザクの音形の場合、指の動きに加え手首や腕の動きもみていきます。
またピアノに対する椅子の位置、足の置き方や開き具合も意識していきましょう。
ピアノは指だけで弾くのではなく、肩甲骨で弾く感覚です。
小指の筋肉と背中の筋肉は繋がっています。
肩甲骨から腕が生えて、手首から指が生えていると言うことを今一度イメージして下さい。
跳躍のあるジグザクの音形の練習法は、ひじと手首のスライドが良いタイミングでスムーズにできているかを目視で確認しながらゆっくり弾いていきます。

柔軟な音と芯のある音…強弱が出ている演奏

「上手だな」と感じる演奏には飽きが来ません。
盛り上がったり落ち着いたりと絶えず流れがあります。その流れの中に豊かな音の強弱がある事が「上手な演奏」の特徴の一つです。
強弱を表現するポイントとして「テクニック」と「考え方」両方からアプローチする必要があります。

テクニックに関しては練習法、腕や手など体の使い方、を見ていきます。
考え方に関してはフォルテを出す意味、ピアノ(小音)を出す意味を自身で見つけていく事についてレクチャーします。

フォルテを出す際、体に力が入ってしまう傾向にあるため音が固くなってしまう人が多く見受けられます。
固いフォルテは聴いていて心地よいものではありません。
聴いてくださる方々の為にも、心地よい伸びのあるフォルテが出せるようになりましょう。

ピアノ(弱音)の出し方については、まずはフォルテを充分に表現してからにしましょう。
芯のあるピアノ(弱音)を出すのは難易度の高い技です。
逆を言うと、ピアノ(弱音)が出せる人は上級者です。
身体の力は抜いて、しかし音は抜けないように…このポイントをしっかり押さえて反復練習をしていきましょう。

ピアノで強弱を出すための方法

まずフォルテ(強く大きく表現)の出し方について具体的な方法をお伝えします。

フォルテの音を出す場合、体の使い方がポイントとなります。
まず足の位置を確認しましょう。足は性別問わず肩幅ほど開き、しっかり床を踏みしめます。次に椅子の高さを確認します。しっかりとした重厚な音を出していきたい場合、椅子の高さは低めに設定すると効果的です。目安としては足を床で踏ん張って、鍵盤上に両手を置いて立ち上がれる位置がベストです。椅子が高すぎたり、鍵盤から近すぎたりすると、うまく立ち上がることができません。しっかり床を踏みしめてその場で立ち上がれるか試してください。

椅子の位置が決まりましたら、手を鍵盤に乗せます。フォルテの音を出す際、鍵盤の側から打鍵してください。力強い音を出そうとすると、鍵盤から離れた位置から打鍵する人が多く見受けられます。鍵盤から離れた位置から打鍵すると、乱暴で柔軟性のない音になり腕や体にも負担です。

和音など一度に2つ以上の音をフォルテで弾く際、体の力を鍵盤の奥へ押し出すイメージを持ってください。イメージを持つタイミングは、音を鳴らした瞬間から後です。音を鳴らす瞬間にだけ体の力を腕を伝って指先鍵盤へと送ります。音を鳴らした直後は体全体の力を抜きます。抜くと同時に、先ほどのイメージをします。すると音に柔軟性が感じられます。

次にピアノ(弱音)の出し方についてお伝えします。
ピアノ(弱音)が出せる人は上級者です。
良いピアノ(弱音)とは遠くにいても何の音が鳴っているのかが明確な芯のある音です。

ピアノ(弱音)を出す為には、まず豊かで伸びのあるフォルテ(強い音)が出せるようになりましょう。
自身の出せるフォルテが分かると、それに比較にてピアノ(弱音)をイメージできます。
出したい音をイメージするだけで、演奏はとても良くなります。

またピアノ(弱音)で弾く意味を具体的に考えましょう。
ただ楽譜の指示に従ったピアノ(弱音)では、魅力的な演奏にはなりません。
なぜピアノ(弱音)なのか、どんな弱音なのかを自身で明確にして下さい。
・遠くから聞こえてくるようなイメージ
・悲しみを表現した音にしたい
・一人きりで歌っているイメージ

自身でピアノ(弱音)にしたい理由やイメージを明確にする事で、説得力のある演奏になります。

ぜひフォルテとピアノの強弱を効果的に使って、飽きのこない上手な演奏を目指しましょう。

まるでお喋りしているような…フレーズの最後が丁寧な演奏

上手な演奏の特徴として、「なめらかな演奏」と「音の強弱表現」を挙げてきました。
最後に、あまり認知されていない上手な演奏の特徴を紹介します。
これを意識するだけで、自分の演奏のみならず他人の演奏を聴く際にも参考になります。

私たち人間は単語と単語を組み合わせた文章を通じて会話します。
単語はイントネーションによって、強く読む箇所、弱く読む箇所があります。
文章もまた、最も伝えたい箇所に音量や発音に意識を注ぎます。

ピアノも同じ容量で表現します。
ピアノは指で会話します。
一つのフレーズごとにイントネーションがあり、最も伝えたい箇所に意識を注ぎます。

ここで挙げる3つ目の上手な演奏の特徴は、まるで人間が話しているような自然なイントネーションを持った演奏です。
自然な演奏を目指す為には、まず不自然な演奏を辞める所から始めましょう。

次のページで自然な演奏の習得方法をレクチャーします。

フレーズとは?…日常会話を例にレクチャー

そもそも、フレーズとは何でしょうか?

フレーズとは音楽の中で自然に区切られるひとまとまり。[楽句]とも訳され、文章の句読点に相当するような段落感を持つものです。

具体的に言うと、楽譜のスラーが掛かっている部分が一つのフレーズです。
上手と感じる演奏をする人は、フレーズの一つ一つが自然に表現されています。

ここで会話での挨拶文を例に,自然な表現について見ていきましょう。

「おはようございます」と挨拶する際、9つの音全てを同じ音量で発音してみて下さい。
まるでロボットのような不自然な挨拶になる事と思います。
この不自然な表現を指でしてしまっている人は、多く見受けられます。

「おはようございます」のどの部分が一番発音に意識を向けるか、またどの音を軽く発音するかを確認しましょう。
一番発音に意識を向ける部分は「はよ」ではないでしょうか。
そして一番軽く発音する音は「お」「ます」あたりではないでしょうか。

同じように楽譜上にあるフレーズも意識の入れ所と抜き所を確認するだけで、「自然な演奏」が実現します。

最後にほとんどのフレーズに共通する「自然な表現」の方法として、フレーズの一番最後の音は丁寧に収めるを心掛けて下さい。

「上手な演奏」と感じる人は必ずフレーズの最後が丁寧に扱われています。

「おはようございます」においても最後の「す」にアクセントを入れて発音すると、不自然で乱暴な印象を受ける事でしょう。
フレーズの最後に向かって力を抜いていくことで、演奏全体の印象が良い方向へと変わります。

ぜひプロのピアニストのコンサートに出かけた際は、フレーズの扱い方に注目して聴いて下さい。プロは全てのフレーズの最後を丁寧に扱っているはずです。